上場企業の情報を事前に仕入れることは違法
自身の「資産」などを運用して対価を得る試みはじつに一般的です。その中でも一般的なもののひとつが「株式取引」があります。「株」というものは企業が資金を集めるために発行しているもので、それらを売買することは「株式取引」と言われます。
株式を「購入する」ということは、その企業の「株主」になるということです。その企業が発行している総株のうち、どれだけの株式を保有しているかでその企業の運営や方針に対しての「発言権」を多く持てるということになります。大企業などの株主総会が注目を浴び、テレビ等のメディアで取り上げられるのは、株主が多く、また社会的にも左右することが多い場合です。「産業」は時代を作る行為であり、各企業、特に大手がどのような取り組みで企業活動を続けるのかということで社会が大きく左右されるのです。
そのような大局的な「株式投資」と、ごく短期的な株式投資の考え方もあります。それは「デイトレード」といわれるような行為で、購入した株券が購入した時よりも高くなった時に「売却」し、その差額を儲けるというシンプルな行為です。企業の株価というものが常に注目されるのはそのためです。株価が下がることはすなわちその株券を購入した人が「損をする」ということであり、株価はその企業の株がどれだけ「需要」を持たれているのかということに左右されます。
どのような時にその企業の株の「需要」が高まるのかというと、その企業が今後取り組むビジネスが有益であると判断されたときや、その分野の市況を一変させる新製品が発表されたときなど、「先行きが明るい」と人が判断した時です。株のトレーダーに必要なものは、そのような「期待できるビジネス」を展開することができる企業を嗅ぎ分けることであり、「これから急成長する」ということが「わかっている」場合はすでにその企業の株券の需要は高まります。その時点でその企業の株は価格が高騰します。「期待できるぞ」ということが「事前に」わかることができれば、その企業の株の売買によって儲けることができるのです。
ですが、そのような取り組みは「違法」です。その企業がまだ公にしていない情報、本来は知り得ないはずの情報をリークしてもらい、その企業の株を購入することは不正に株で儲けるということです。そのよう取引は「インサイダー取引」と言われ、忌避されるべきものなのです。
ニュースなどでたまに発信される「インサイダー取引」の実態はシンプルです。企業の関係者が不正に情報を外部に漏らし、株券を購入してもらうことで第三者に儲けさせ、その中からいくらかを自分にバックしてもらうという図式です。そのようなことが常態化してしまうと、株式市場の原理が崩壊します。情報を知り得る特別階級の人たちのみが、株式投資で儲けることができるというわけです。
ですから、盗聴器を用いた情報の収集、それによって株式投資で稼ぐことは違法とされているのです。そのような違法な手段から身を守ることも企業に課せられた義務です。また、軽々しく株価に関わるような情報を第三者に漏らさないようにするという意識も大切です。株取引は企業の貴重な資金調達源でもあります。そのような取り組みをまっとうに行うことこそが、企業活動においても大切なのです。